インターネットで部屋探しをしていて、良い物件を見つけたと思って問い合わせたら、すでに申し込みが入っているといったことはないでしょうか?
その物件はおとり物件の可能性があります。実際に存在しない物件のために不動産屋へ足を運ぶのは時間や交通費の無駄ですよね。今回はそんなおとり物件の種類や見分け方について紹介します。

おとり物件とは

賃貸物件探しに注意したいのがおとり物件です。おとり物件とは、

  • 実在しない物件
  • 存在はしているけども既に契約されているといった理由で、実際に取引ができない物件
  • 問い合わせ多数にもかかわらず、実際に取引をする意思がない物件

を指します。不動産業界では釣り物件やおとり広告とも呼ばれています。おとり物件は宅建業法32条の誇大広告の禁止にあたりますが、摘発が困難なため、いまだなくならないのが現状です。

不動産情報サイトのおとり物件の割合とは

公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会が2021年2月25日に発表した調査結果によると、大手賃貸不動産情報サイトの12.2%がおとり物件だったそうです。
宅建業法や業界の自主規制で禁止されているにもかかわらず、相当数のおとり物件が存在していることがわかります。
参考:公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会|インターネット賃貸広告の一斉調査報告(第8回)(chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.sfkoutori.or.jp/webkanri/kanri/wp-content/uploads/2021/02/20210225_chintaichousa.pdf)

おとり物件の種類とは

おとり物件は悪意を持って行われるものばかりではなく、不注意から生まれるものも多く、適切な情報の更新や管理ができていなければ、おとり物件になる可能性が高くなります。

物件情報が古いまま

成約済みとなった賃貸物件を削除し忘れたまま掲載していたり、最新の状況を把握せずにインターネット広告を掲載し続けていたりすることで、募集が終了している物件を掲載している場合があります。
このようになってしまう原因は、物件の管理システムの問題が関係しており、賃貸物件サイトで掲載している物件には「自社で管理している物件」と「他社あるいは個人で管理している物件」の2つに分けられます。
「他社あるいは個人で管理している物件」に関して、一般的に不動産会社へ成約済みであることを連絡することはほとんどありません。そのため、成約済みになっても、認識するまでに時間がかかるというわけです。

来店率を増やすための悪質なもの

悪質なおとり物件には、来店率を増やすためのものが多いようです。
来店率を増やすことで、成約率にもつながります。実際に契約できないにもかかわらず、来店率を増やすために、好条件の物件を宣伝しているわけです。
よくある手法としては、紹介可能といわれていたのに、予約していた前日や当日に「契約が決まったので別の物件を紹介したい」といって別の物件を紹介するというものです。このような場合、おとり物件の可能性は高いといえます。

現在、国は不動産IDルールというものを検討しています。この不動産IDルールが始まればおとり物件が減る可能性が高くなるといわれていますが、現状は個人での対策が必要です。

不動産IDルールとは

不動産には土地・建物いずれも、共通で用いられる番号や記号が存在せず、利用者の住所、地番の表記ゆれなどが起こると、土地や建物を明確に指定できないという問題がありました。2021年にデジタル関連改革法が制定され、官民あげてデジタル化の取り組みが進められています。このような背景から、国土交通省を主体として検討されているのが、不動産にIDを付与して運用するルールです。

おとり物件の見分け方

おとり物件に引っかかると、自分が希望している物件を逃すことになり、予算や条件に合わない部屋を制約させられてしまう恐れがあります。
それでは、どのようにおとり物件を見分ければいいのでしょうか。自分の希望する物件がおとり物件ではないか見分ける方法を紹介します。

物件管理がずさんな不動産屋の見分け方

物件に関しての情報が著しく不足していたり、不確定であったりする場合は注意したほうがいいでしょう。
具体的には、物件の詳細情報が記載されておらず、画像もないような広告です。また未公開情報ありと別物件へ誘導している場合は避けたほうがいいでしょう。

来店率を増やすための悪質な不動産屋の見分け方

内見を現地待ち合わせで依頼する

広告を出している不動産屋に連絡し、現地待ち合わせで内見したいと頼んでみてください。「一度来店する必要がある」と来店するよう指示されたり、「管理会社が嫌がる」といった理由をつけて断られたりした場合、その店舗に行くのはやめたほうがいいでしょう。高確率でおとり物件です。内見を依頼された場合、不動産屋はカギを手配しておく必要があります。おとり物件ですのでカギが入手できないため、何らかの理由をつけて断るのです。
悪質なおとり物件の場合、来店率を増やすためのものなので、現地での待ち合わせは断られます。怪しいと思ったら、どうしてもその物件を見たい旨を伝えるようにしましょう。
ただし、何らかの理由によって内見ができない場合もあり得るので、他の項目とあわせておとり物件の可能性を考えてみることをおすすめします。

相場にあっていない条件

築浅なのに相場より安いという物件を見かけたら、おとり物件かもしれません。築年数をごまかしていたり、本来とは異なる家賃で広告掲載している可能性があります。
ただし、然るべき理由があって相場より家賃を下げているケースもあり得るため、気になる場合は確認しておくといいでしょう。

複数の物件情報サイトを見比べてみる

一つの物件情報サイトにだけ掲載され、他の物件情報サイトに掲載されていない場合、おとり物件の可能性が高くなります。また、複数のサイトに情報が掲載されている場合でも注意が必要です。
特定の不動産屋でしか申し込むことのできない物件はありますが、数は多くありません。募集中の物件の80%程度は、どの不動産屋が窓口でも借りられます。
どちらの場合であっても、直接不動産会社へ連絡し、気になるところを確認するようにしましょう。

好条件なのに長期間応募されている場合は要注意

誰が見ても好条件な物件は、物件情報サイトの更新日を確認するようにしましょう。本当にいい物件なら、掲載期間から2~3週間で埋まってしまいます。好条件にも関わらず、1カ月以上の登録だったり、何度も見かけるようであればおとり物件だと思っていいでしょう。

定期借家やシェアハウス

契約内容が特殊な定期借家やシェアハウスをおとり物件に使っている場合があります。このような場合、普通の賃貸物件であるかを質問すれば見分けられます。定期借家やシェアハウスは家賃が安いためおとり物件に使われやすいのです。広告に記載がない条件は来店後に説明して、別の物件を紹介するという手口です。
なお、定期借家とは更新がない契約のことで、契約期間が終われば原則出ていかなければなりません。シェアハウスは居室以外が共同使用の物件です。

事故物件

明らかに周囲の相場と比べて家賃が安い場合、その物件には何らかの事故物件である可能性があります。事故物件には主に2種類あり、

  • 心理的瑕疵:居住者が事件や事故で亡くなった物件
  • 物理的瑕疵:雨漏りなど住む上で支障がある物件

物理的瑕疵はあまり見られませんが、心理的瑕疵によって賃料が安くなる物件はたまに見られます。1~2万円ほど相場より安くなり、場合によっては大幅に値引きされるような物件も。
物件自体は空いているわけですが、実際に店舗に訪れると「実は・・・」と実情を切り出されるわけです。
他にも隣近所にクレーマーがいる、土壌汚染など、表に出せないような問題を抱えている場合があります。このあたりの情報は事前に問い合わせして確認しておくといいでしょう。

問い合わせはできれば電話で

おとり物件かどうか確かめたい場合、電話がおすすめです。不動産屋の態度や話し方で判断しやすいためです。強引で態度が悪く、確認もせず空いていると即答した場合は要注意。通常は空き状況を確認するため折り返しの対応になります。

不動産広告も要注意

繁華街や交差点などの電柱や道路上に広告が貼られていたりします。大家さんの意向によってインターネットに掲載されない物件があるため、ねらい目だったりするのですが、実際はどうなのでしょうか。
まず、こうした広告の大半は無許可で貼られているため、条例違反の可能性が高いです。なお、こうした広告は捨て看板と呼ばれています。貼り付けたまま改修する予定がない、捨てておく看板だからです。
捨て看板の内容は不動産広告の表示として禁止されている文言が使われている場合が多く、会社名や宅建免許番号が記載されていないのも特徴です。連絡先は携帯電話番号が多く見られます。
このような捨て看板は魅力的な文言が並んでいるため、情報だけでも聞いてみたいと電話をかけてしまうようです。その結果、しつこく勧誘を受けるという事態になりかねませんので、安易に連絡しないようにしましょう。

おとり物件によって嫌な思いをした場合の通報先

おとり物件に騙された場合、内心穏やかではありません。貴重な時間を使い、色々な理由をつけて契約できなかったとなれば、1日が無駄になってしまいます。
もしも、おとり物件に騙されたのなら、SUMOやLIFULL HOMESなど大手の不動産情報サイトでは、悪質なおとり物件の被害にあった場合申告できるようになっています。
物件の情報と掲載されていた仲介会社を申告しますが、個人情報も必要になるので、規約を確認して同意のうえで送信するようにしてください。これらの情報をもって事実確認を行い、削除や修正をしてくれます。それでも改善されない不動産業者は1カ月の広告掲載停止の措置が講じられます。
公的機関に通報することもできます。各都道府県の不動産部門に連絡してください。悪質と認められると業務停止といった思い処分が下されます。